今年の頭に『婚活1000本ノック』というドラマにハマっていた私。
ドラマの公式インスタグラムの投稿がおすすめに出てきたのを機に、キャラの濃い男性陣が面白そうという単純な理由で見始めた。
ドラマのあらすじはというと、かつての恋人が幽霊となり、主人公である売れない小説家の前に現れ、「婚活が成功したら成仏する」ことを条件に婚活の数をこなしていく......といったところ。
その小説家の設定が「数年彼氏もいないアラサー独身女性、小説家なのに小説の仕事は1割で、残りの9割はアルバイト」という、なんとも私に近しい設定だったので、よりこのドラマにのめり込んでいった。
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劇中で野村周平さんが演じるアフロ頭の小池という人物が出てくるのだが、彼のセリフにハッとさせられてから、少しだけ私のコミュニケーションの取り方が変わった。
「“Yes, And”、他人の言動やアイデアを初っ端から排除しないで一旦受け入れる考え方のことだよ」
小池曰く、「デザイナーとしてめちゃくちゃ大事なマインドだからね!」とのことだった。
“Yes, And”という言葉を聞いて、とあるエピソードを思い出した。
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私は幼い頃、物知りな父とうんちくをひけらかすバトルをするのが一種のコミュニケーション方法だった。
というのも、父が「リサが知ってることでお父さんが知らないことは何ひとつないからね〜」と子ども相手らしからぬ煽りをしていたため、私も負けじと挑んでいた。
それから時は20年ほど経ち、知らず知らずのうちに身の周りの男性に対して父の姿を投影してしまうのか、無意識のうちにうんちくを仕掛けてしまっていたようだった。
ある時、知人男性に「リサちゃん、これってこうなの?」と問われた内容に対し、私は「そうですね、でも○○ですよ」と訂正したことがある。
すると「女の子はたまには知らないフリをした方がいいよ〜?」と言われたのだった。
「そもそも知っているのなら聞いてくんな」とも思うのだが、『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマで主人公がかつての恋人に「小賢しいんだよ」と言われていたのを思い出し、その言葉が今の自分の状況にもしっくりきてしまった。
父とのうんちくをひけらかすバトルを機に、無意識のうちにコミュニケーションにおいて“Yes, But”という返しをしていることに、時を経て『婚活1000本ノック』での小池の発言を通して俯瞰できるようになった。
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他人の言動やアイデアを初っ端から排除しないで一旦受け入れるというのは、うんちくバトルで育った私からすると真反対のコミュニケーション方法。
思い出話になるのだが、10歳くらいの時に父とのうんちくバトルで1度だけ私が勝ったことがある。
初めて父に勝ち誇った瞬間だったので未だに鮮明に憶えている。
「リサ、“ウィーフィー”って知ってる?無線でインターネットが繋げるようになったんだよ」
「お父さん、それ読み方が違うけん?“Wi-Fi(ワイファイ)”って読むとよ?」
もしあの頃、父の威厳を保つために「へー!無線でインターネットが繋げるようになったんやね!それって“Wi-Fi(ワイファイ)”って読むんやないかな?」と今の私なら返せるな......と思えるようになったということは、きっと“Yes, But”のコミュニケーションを手放すことができるようになった証拠。
新たな知見を広げるキッカケはどこにあるかは分からないものだ。