「学校行くんだ!良いじゃん笑」
私の話を聞いたパートナーは明るく言った。
「私、卒業できるんかな、これ笑。心配なのは心配なんだけどねぇ」
えへへって言いながら決意を伝えてみたら、応援してくれたので一安心。
大学を卒業して、1年後にはまた大学へ通う。
まさかそんなことになるとは思ってもいなかった。
◎ ◎
通信制の大学への入学を考え始めたのは、新卒1年目の10月。
頼りにしていた先輩や派遣の方の異動や退職が少しあって、自分にも沢山仕事が割り振られ始めた時期だった。
仕事は楽しいけど、帰ってきたら毎日電池切れでベットの上にぶっ倒れる。
コロナが流行っていて感染すると仕事にも影響してしまう関係で、週末に気軽に誰かに会う事も難しい。
結局、家で一日中寝てしまって、気が付いたら週末が終わっている。
大学では常に何個かのコミュニティを行き来している私にとっては、まさにどん詰まりと言っても良い状況だった。
知らない土地で話す相手も限られるし、人を介した新しい世界との出会いも無い。
仕事は仕事で楽しかったけど、でもやっぱりどこかでこのままじゃいけないと思った。
これ(仕事)が無くなったら、私に何が残る?
お金以外の価値って何が大事だったんだっけ?
この世界しか知らないのはつまらない。
このままで良いんだろうか…。
「いや、よく無いだろー!何か別の世界を作らないと!」
そんな思いがふとよぎった。
◎ ◎
自分が没頭できる世界が仕事以外に欲しかったのだ。
そこから何をするのか探して、大学時代の論文を読んだり、新しい事を学ぶことに没頭することが楽しいことに気づいた。
「よし、興味のあることを学校かどこか行って学ぶ」
これが私が社会人になって勉強しようと思った動機である。
そんな動機で私が学び始めたのは、学芸員資格取得のための内容だった。
理由は大学在学時に国際政治(主にホロコースト)を研究していて、その延長線上で歴史を後世に残すことに興味があったから。
やりたい事が決まれば、行動は早い。
社会人も数多く受け入れている芸術系の大学を探して、科目等履修生として登録。
(ちなみに当時のボーナスのほとんどが入学金と授業料に消えてしまった笑)
ちなみに「学芸員の資格=すぐ就職や転職ができる資格」ではない。
自分の深めた研究分野があって、その研究分野とそれを扱う博物館があって、初めてその資格を活かすことができる。
それでも応募は殺到するから数十倍の選考に勝ち抜く必要はあるのだが…。
それでも学んでみて、新しい発見もあった。
◎ ◎
まず、学ぶ環境を整える力が身についたこと。
仕事をしながら、興味がある事を学ぶ。
フルタイムで働いているから、私の場合、朝の時間と夜の時間、週末の時間が勉強できる時間の対象になった。
自分でコントロールできる時間枠の中で、いかにして勉強する時間を捻出できるか。
大変なこともあったけど、やっぱり工夫して色々なことを学ぶのは楽しい。
この雰囲気は学生時代の部活と勉強の両立にちょっと似ているところがあるかもしれない。
自分の疲れやすいポイントや、辞めてしまいそうなポイントを考えてスケジュールを作る。
それだけでも自分と向き合うことが多かったし、自分への理解が深まった気がした。
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他にも社会の中での、物の見え方が変わったこともある。
今まで美術館や博物館に行って展示物を眺めるだけだったけど、その裏側がどうなっているのか知ることで見える景色もだいぶ違っていた。
「なぜ今この展示なのか」、「どんなメッセージが込められている展示なのか」など、今の仕事にも通じる考え方や見方がある。
いかに分かりやすく、しかし外してはならない大事なポイントをどう抑えて伝えるか。
文系とか理系とか、そんな括りじゃなくて、今まで学んだことはなんとなく繋がっていく。
幅広い分野に関係する学芸員という資格だからこそ、感じたことなのかもしれない。
そして限られた資源の中で、試行錯誤している学芸員の方の事例もたくさん知ることができた。
◎ ◎
最後に継続的に交流できる仲間と出会えたこと。
学びの場で出会えた方々にも支えられる事が沢山あった。
年代も違うし、性別もキャリアも違う。
学ぼうと思った動機も違う方々と勉強する事は、刺激が大きかったと思う。
新卒で仕事をしながら大学に通う人間はあまりいないようで、教室に入った時には不安だったけど。
それでもおおらかな人生の先輩方に、たくさん助けていただいた。今でも近くに行く時は、一緒にご飯を食べる人もいる。
たまに会うけど、久しぶりに会った感じがしないのは一緒に学んだ経験があるから。
同級生ってやっぱり大事だと思う瞬間である。
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ということで、一念発起から学びを続けていくことで私は仕事とは違う別世界に出会った。
自分が想像していなかった世界に出会うのは、不安もあるけど視界は絶対広がる。
学びにトライした自分も、やり抜いた自分も見えるからきっと自信にもなるはず。
新しい世界は楽しいぞー!
学びを始めるか悩んでいる人には、ぜひ伝えたい思いである。