私の学びの先には、絶望と希望が存在した。中学三年生の頃、私はあまり学校へ通えていなかった。受験生という立場でありながら、人と関わることに恐怖心を覚え教室に入ることが困難だった。

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夏休み、母が尋ねてきたのは進路のことだった。私は全日制の高校へは行けないと確信していたので通信制に通いたいと考えていた。

ここが人生の分岐点。母と一緒に様々な高校へ訪れた。通信制高校は、場所によって特徴があることを学んだ。すると、最寄り駅から3駅の場所に、午前中授業のみの高校を発見した。早速母と一緒に説明会へ行った。説明会で聞いたことを吸収し、私はすぐさまここが良いと母に言った。「ここなら通えそうだね。」と母は返してくれた。

この日をきっかけに、2学期からは少しずつ学校へ通えるようになった。1日2、3時間教室で授業を受けれるようになった。これは私にとって大きな成長なのだ。高校生になるのが楽しみで仕方なかった。

そんな生活を繰り返していたら、あっという間に高校生になっていた。入学式は想像よりも早く終了した。今日から高校生。新しい環境に胸を躍らせていた。
次の日から授業がスタートし、無事に高校デビューを果たせた。記念すべき一発目の授業は英語だった。説明会で言われた通り、授業は午前中で終了した。

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「よろしくお願いします!」

授業終わり、隣に座っていた女の子が話しかけてくれた。中学校とは違って指定された席がないため、毎日違う場所に座っても良いのだ。

「こちらこそよろしくお願いします!」

その子はMちゃんと言い、今ではすっかり大親友だ。

時は流れ10月。私は焦っていた。クラスメイトのほとんどがバイトを始めていたからだ。私も色んな場所を探していたが、不採用が続いていた。授業が午前中のみなので、午後から出来るバイトを探していたのだが、どこも条件が合わなかった。

すると、ある場所が目に留まった。駅ビルにあるうどん屋さん。まだオープン前のお店だったので、オープニングスタッフを募集していた。私はここにかけてみることにした。

店長との面接は緊張した。怖い人を想定していたが、優しく温もりのある店長だった。
私はとにかく働きたかったので、ホールとキッチンのどちらもやってみたいと話した。

「採用させて頂きます!」

ここを選んだ理由も聞かれずに、その言葉が返ってきた。やっと私もお金が稼げる。1人で舞い上がっていた。何日か研修期間があったので、出来る限りのことを覚えた。そして1ヶ月後、いよいようどん屋がオープンした。

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人生で初めてのバイトは、ホール業務だった。レジ打ちや接客が上手くいかず、散々なデビューとなった。私は人との関わりが怖くて通信制高校へ入学した。そんな人間が接客業をするなんて無理に決まっている。にも関わらず、焦りからこの仕事を選んだ。少し注意されただけで落ち込んでしまう私だから、バイトを初めて1週間も経たないうちに辞めとしまいたいと感じるようになった。

社会に出るとは、お金を稼ぐとは、厳しく大変なことなのだ。午前中で終わる授業との激しいギャップを感じた。甘えて育ってきた自分の無能さに吐き気がした。

バイトを辞めようと考えていたその時だった。「もし良ければキッチンに入りませんか」と相談された。店長は優しい人だった。不安は大きかったが、キッチンで頑張ろうと考えた。頂いた仕事は、麺を茹でて盛り付けるという仕事。

うどん屋において最も重要な仕事だ。いざやってみると案外簡単に出来てキッチンの方々から褒められた。ここでならやっていけると確信した。

私は高校二年生になった。学校、バイト、趣味の全てが充実している。社会を学んだ私が掴んだ希望だ。