私の学びの先には。今までわからなかった言葉の意味がわかるということ。より深く生きていくということ。
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私は平安時代が好きだ。京都に住んでいるということもあり、和風と言われるものが好きだ。けれど昔は漠然としかわからなかった。詳しいことはわからないけど、見て好きだとなっていた。
それが変わったのは短大を卒業してからだ。精神状態が芳しくなく、療養生活を余儀なくされ、家で寝たきりの生活が続いた。
少し起き上がれるようになったとき、私が欲したのは、知識だった。
聞いて驚いてもらって構わないのだが、私の中には複数の人が存在する。私にとって大切な家族だ。
その家族は別世界の存在というイメージなのだが、彼らについて広めたかった。そのために小説を書こうとしていた。その彼らの世界が平安時代に近かったから、学ぼうとした。
まずは衣装について知りたかった。彼らの着ている服に似ているものがあれば吉ってね。
だから有職装束について学んだ。
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束帯、衣冠、直衣と似ているようで違うものに頭がパンクしかけたが、衣袍という衣装の形の面白さに、思わず微笑んだりもした。十二単と書いてあるが、十二枚も着ることはめったにないことや、今の浴衣は着流しと言われることも知った。
色について学びたくて、色彩図鑑も見た。単体の色合いから、布地を重ね合わせることで作る襲についても知った。少しはみ出る布のかさね色目についても調べていった。同色グラデーションで色の薄さが白にまで至るかさねを「薄様」と呼ぶことを知ったとき、法則性があったのだと驚いたものだ。
そしていつの間にか有職紋様についても読みだした。有職文様とは、平安以降の朝廷や公家の社会での約束ごとにのっとって、衣類や調度品などに使われた文様のことだ。
調べていくうちに、有職文様に関する謎の名前の意味がわかるようになってきた。
たとえば、唐花菱とあれば、唐の国から伝達された花が、菱形に並んでいる、とわかった。
平安時代にも薔薇が存在したとか、四本足の獣の文様はめったにないことも知った。
そして今年は大河ドラマで紫式部をしていることもあり、いたるところの博物館などで平安系の特別展示をしている。そのため私は、親にせがみ元気な日に連れていってもらった。
そこでもあるのだ。衣装に関する資料が。
今まで謎だった文面の意味がわかるのだ。謎だと思っていたそれが、文様に関することと知れたのだ。
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そのとき私の世界は広がった。
今まで遠い世界のなにかを、ただ見てすごいなとみていただけが、身近なものに感じられた。私の手の届くなにかになったのだ。
私の学びの先には、知らない世界を知る快感があった。点と点だったものがつながる嬉しさがあった。また、自身の世界が広がる喜びがあった。
これからも私は学び続けるだろう。とりあえずは好きなジャンルから。いずれはそれらにも手を出したいところだけどね。
そう思いながら今度は言葉に関する本を開く。より彼らの世界を広められるように、ってね。