実は得意だったこと、それは人前に立つことだ。目立ちたくない、多くの目を向けられるのが苦手、そう思う人は多いだろう。私自身も小さいころはできるだけ人前に立たないように逃げていた。しかし、学校での発表や大学でのプレゼンで経験を積んでみると、思ったよりも緊張していなかった自分に気づいた。人前で話すことにそれほど苦手意識を持っていなかったことにも気づく。自身が持てる準備を重ねていれば、苦手など考えることなく成功できたと思えるとわかった。今回は、明確に得意だと感じた瞬間である大学生のときのエピソードを綴ることにしよう。
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大学2年の冬、情報をまとめてプレゼンする授業があった。授業の内容がざっくりしているのは、あくまでもプレゼンや発表、資料作りの流れを経験させておくための授業だったからである。テーマを自由に決め、調べたことをスライドにまとめてプレゼンをするという内容。授業は学年全体で行われているのだが、少人数に分かれ、複数の教員が同じ授業を担当するスタイルを取っていた。
自分が掲げたテーマは忘れてしまったが、テーマ決めを行い、情報を集め、スライドを作成した。情報を集めることやスライドを作ることはそれほど苦手だと思っておらず、スライド作成はむしろ得意だと思っていたくらいだ。パソコンスキルが飛び抜けてあるわけではなかったが、ハードルは低く感じられた。
問題はプレゼンだ。同級生の多くは、原稿をつらつらと紙に書き連ね、暗記をするかのように読み上げる。「~です。」や「~ます。」まで一言も間違えないように発表しようとしていた。そんな中私は、スライドと伝えたいことの要点をまとめた手カンペを作ってプレゼンに臨んだ。一言一句原稿を決めてしまうと、間違えたときや噛んだときの修正がききづらくなると思ったからである。決まった文章を決められたスピートで読めば、確かに時間を最大限に使ってプレゼンできるかもしれない。しかし、こういうときは必ず、緊張して早く読み上げてしまうものだ。これでもか、と書き綴った渾身の原稿も、実際に読み上げてみると、思いのほか早く読み終えていることも多々ある。だから私はあえて要点だけを決めて、話す言葉はそのときに出た言葉に任せようと決めた。
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授業の中でプレゼンをするのだが、その日の前日。さすがに緊張はした。明日はうまくできるだろうかと思うこともあり、練習は念入りに行った。迎えた当日。私は、前日に見ていた番組のキャスターのように説明をしてみようと思った。原稿をみるよりも、スライドの文章やイラストに注目し、伝えることをちゃんと伝える。ゆっくり話す意識をすること。人に伝える仕事をしているという設定を自分に作り、ニュースキャスターとして人前に立った。
すると、想像よりも緊張せず言葉が出てきた。スライドの出し方に戸惑うことなく、棒で画面を指しながら端的にプレゼンができたのだ。自分でも驚くほどニュースキャスターに慣れたのではないかと思った。プレゼン時間もちょうどよく終了し、満足できるプレゼンができたと自画自賛したくらいだ。
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プレゼンを経て思ったのは、細かいところまで決めつけないほうがうまくいくということ。プレゼンとは人前で話すことであり、間違いなく話そうとするから緊張や間違いが起こってしまう。その規制をあえて緩く設定し、気にしない程度まで落とせば、苦手意識は払拭できるのだ。
また、個人的にはニュースキャスターになりきる方法もうまくいった要因だと考えている。人前で説明するよりも、カメラに向かって届けるというスタンスのほうが緊張が和らいだ。人に見られているという意識をなくせば、人前でのプレゼンも思うように動けるのだとわかった。
決して多くはないけれど、人前で何かを話す機会はあるだろう。大学生で得た経験と成功体験によって、私は緊張せず確実に伝えられると気づけた。人前で話すことは、苦手だと漠然と思っていただけであり、案外得意かもしれない。プレゼンを終えたあとの拍手にも気持ちよさを感じられたのだから、人前で話すことは向いていることのひとつなのだろう。新しい発見だった。