夏生まれのくせに、昔から四季の中で一番秋が好きだ。
何をするにも心地よく過ごしやすい気候に、美味しい食べ物。夜が少しずつ長くなっていく感覚も「いつ長袖を出そうかな」と考えるのも楽しい。子どもの頃の楽しかった思い出が少ない私にとって大人になって自由を手にして迎えた秋は、初めて尽くしの記憶が鮮やかにある。

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割と特殊な家庭で禁止事項の多かった私にとって、ずっとしてみたかったのが「仲の良い友達を家に招いて夜更かしする事」、「友達と深夜に出かける事」だった。アラサーのくせに小中学生の女の子みたいでなんだか恥ずかしいけれど、実家にいては絶対に出来なかった私にとっては憧れで、本当だったら1人暮らしを始めてすぐにでもやりたかった。
それでも環境が大きく変わった事やしばらくの間仕事が出来る体調ではなかった事もあって生活が落ち着いてきた秋口に「お菓子パーティー」と「ファミレス夜更かし会」を開く事が出来たのだった。

私よりも年上の友人が家に来てくれてどうでもいい話をしながらお菓子を食べたり、少し遠くのファミレスまで連れ出してくれて季節限定のメニューをシェアして食べた後にドライブしたり。朝帰りをしても咎められない自由さはとても心地よく、大人になって出会った友人とこんな風に自分をさらけ出して過ごせる事が無性に嬉しかった。
友達の少ない人生を歩んできて「私ももっと友達が欲しいな」とクラスのムードメーカー的な存在だったクラスメイトをよく羨んでいた自分にもずっと大切にしていきたいと思える友人を持てた事、私の子供じみたやりたい事に対して「いいじゃん楽しそう!いつやる?」と賛同してくれる優しさが身に染みた。

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私は確かに今でも友人が多くない。それでも今しっかりと付き合いがある人たちは全て自分が本当に心から大切にしたいと思える人だけで構成されていて、お互いに相手を思いやる事が出来ているのってなかなか凄い事なんじゃないか。無理して苦手な人と交流をしていた時期もあったけれど、それは集団の中で1人でいる事目立って「あの人友達がいないんだ。かわいそう」と思われてしまうのが怖くて自分の心を削って無理矢理に繋いでいた縁で、自分の意見に自信がないから人に合わせてばかりで本心を見せる勇気もなかった。

自分を相手と同じくらい大切にする、それがようやく出来る様になったからこそ心から楽しい付き合いが出来ているのかもしれない。

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大切な人たちと一緒に出来た初めて経験は季節が巡ってくる度に「あの時楽しかったなぁ」と思い出しては顔がほころんでしまう。今でもイベントや数カ月に一度折を見て家に招いたりファストフード店に集まったりの夜更かし会を開催しては、それぞれの近況やとりとめのない話をして楽しんでいる。

最近も友人からようやく大仕事を終えてひと段落し生活も少し落ち着いたのでそろそろ会おうよ、と連絡が来たところだ。スマホのカレンダーに新しい予定を打ち込む時、指だけでなく気持ちも弾んで子どもみたいにワクワクしながら私の秋の夜は更けている。