最近、母に薄毛治療のクリニックへ連れて行かれかけた。24歳で。勝手に電話予約をされたので、確固たる拒否の末にキャンセルした。確かに私の毛量は少ないし、細くて柔らかい髪質だ。確実に将来はハゲるだろう。でも、それに抗う気も不満もない。私は自分の柔らかくてまっすぐな、サラサラの自毛が好きだから。ハゲたらウィッグとかでごまかすつもりでいる。私が髪の薄さを気にする頃には、技術も進化しているだろう。

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私の母は少し珍しくて、どんなオシャレも美容整形も肯定派だ。それは助かるが、結構押し付けられがちでもある。高校の頃から金髪にしなよ、派手髪にしなよ、ピアスは開けないの?夜遊びは?もっと足や肩を出して露出したらいいのに!女の子なのにコスメや服が少なすぎる!ブランド品は興味ないの!?……なんて言われ続けている。二重整形に興味ないの?と言われたこともある。そもそも私はパッチリではないにしろ二重だし、顔に不満があるなんて一度も言ったことがないのに。だから母に何か聞かれるたびに、興味がないとハッキリ言い続けている。それをしている人を批判したいわけでは全くなく、単純に私はしたくないから。

そして母にも悪気はない。祖母がとても厳しく、やや異常なレベルなので(自販機はおろか、外食もほぼ許されなかった。飲み物はヨーグルトの容器で飲んでいたし、髪は風呂場でカットされていた)、その反動だと思う。

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ただ、それとこれは別だ。私は今の、自然な状態の私が好きなのだから。

全くオシャレをしないという意味ではない。出かけるときにはメイクをして、可愛い服を選び、髪の毛をアイロンでセットする。セルフネイルもするし、お風呂上りにはしっかりと全身の保湿とマッサージをしている。それ以上はしないだけで、人並みにオシャレを楽しんでいると思う。

以前、久しぶりに高校時代の友人に会った。高校時代の活発なイメージとは打って変わり、とてもオシャレになっていた。素直に「綺麗になったね」と伝えた。友人はパーソナルカラー診断やメイク講座を受けたらしく、さらにまつパやネイル、ヘアスタイルにも力を入れていた。私も色々と勧められたが、「したことがないから、試してみよう」という理由でまつパをしてみた。結果、やらなければ良かったと思った。まつ毛はとても綺麗に上がったし、施術も丁寧だった。でも、私には必要がなかった。施術を終えた私には、感動や喜びではなく、「上がってるなあ」という単調な感想だけが残った。このお金で、趣味のピアノの楽譜が買えたのに、と思った自分がいた。

友人の影響で、パーソナルカラー診断を受けてみようかとも思った。しかし、予約を確定する画面まで進んだところで手を止めた。本当に受けたいのか?何のために?と自問自答した。私は白が好きでよく身に付けているが、仮に似合いませんよと言われたらやめるのか?逆に、あまり好きではない黒や緑が似合いますよと言われたら、それをたくさん着るだろうか?そう考えた末に、カラー診断よりも自分を信じようと思った。化粧品選びの悩みは減るかもしれないが、買う前に試して、自分の目で確かめればいい。

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美容やオシャレに力を入れている人のことを否定するつもりはない。むしろ、たくさんの時間とお金を費やして、自分を磨いているのだから尊敬している。ただ、そのほとんどが私には合わないというだけ。人それぞれだから、正解も間違いもない。尊重されるべき個人の価値観だ。だから私も、自分の考えを尊重しようと思う。少ない髪の毛も、そばかすの多い肌も、小ぶりな胸元も、好きな色も、全部私の大切な一部で、かけがえのないものだと。