私の会社には、休職者と退職者を大量に出したプロジェクトがあった。何が原因なのかはよくわからないけど、アサインされた先輩方は気が付くと退職していたり、求職していたり、実情までは分からないまでも社内ではちょっと問題視されていた案件だった。

ちょうどコロナ禍でもあり、プロジェクトの進め方や管理の仕方が難しかった時期ということもあるのかもしれないが、それでも、退職者や休職者が続出していること、そしてその情報が噂として広がることはちょっと異常な状況だったと思う。

そして、その時に関わっていたプロジェクトが失敗して、この異常なプロジェクトにアサインされたことは、私がお仕事をお休みすることを考えるきっかけになった。

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システムエンジニアの仕事でどんな業務をするかは、割とどのプロジェクトにアサインされるかが重要な要素だったりする。それぞれの会社や社員に得意分野や担当分野はあるけど、進歩の早い技術の世界では、困りごとは絶えないし解決策も様々なので、困ったらその都度調べて考えて解決策を検討していくことが求められる。

だから、得意分野だけで安心してお仕事できる事は珍しいし、開始後に変更となる状況もある。進め方もフルリモートだったり、自社での開発、お客様先でのサポートだと多岐にわたる。会社員である以上、どのプロジェクトにアサインされるかを選ぶことはできないし、フルリモートでと言われれば自宅での業務だし、出社が求められれば応じるしかない。

私が、その異常なプロジェクトにアサインされた時には、通勤時間も業務に充てられるようにという理由でフルリモートでの業務となった後だった。その時の私は、前のプロジェクトでも残業がかさみ、信頼していた先輩が退職したプロジェクトということ、そしてそういう異常事態であるプロジェクトにアサインすることに対して事前に連絡がなかったことで精神的にまいっていた。

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分からないことだらけのプロジェクトでフルリモート業務、周囲は始業前から深夜まで業務を行っているような状況では、気軽に質問することもできずに、自分でどんどん自分を追い込む悪循環におちいっていた。そしてその時、私も退職や休職することを考えた。

これから先、こんな風にアサイン先や会社の都合に合わせて、業務を続けていく自信がなかったのだ。でも、一方で学生でも社会人でもないこと、自分の肩書がなくなることがすごく怖かった。配偶者や子供がいない私には、名乗れる肩書は会社員しかない。

そして、一度それをなくした後、同じレベルのものが得られる自信がなかった。業務への不安、求職とその後の不安、どちらも不安ばかりで、結局選ぶことはできず、そのプロジェクトが中止となることで、離れることになった。

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町に目を向けると、いろんな働き方や転職を斡旋するポジティブな宣伝をたくさん見かける。大幅に年収アップするとか自分の好きな場所でお仕事しようとか。でも、そういうことができるのはほんの一部の優秀な人だけだと思う。

私みたいに、ネガティブな理由であきらめた人に社会はまだまだ冷たい。数時間で面接で能力のすべてを理解することはできないし、休まないのは最低限満たすべき事項なのかもしれない。

誰でも理解できるそんな当たり前の理由は、本当に逃げることが必要な人からもその選択肢を奪ってしまう。誰もがどんな状況でも当たり前に全力を出せるわけではないのだから、もう少しだけたくさんの選択肢とあきらめても心配のない世界になったらいいと思う。