スーツの当たり前を知ったとき「女性らしさ」の固定観念に気づいた

ある日、リビングのドアを足で閉めたときに母から言われた「女の子なんだから……」という言葉は、私が女性として最初に反発心を抱いたきっかけかもしれない。
小さい頃から外で遊びまわることが大好きで、好奇心旺盛だった私。
母は、私にバレエを習わせたかったみたいだが、「ふりふりした可愛い服も着れるよ?」という提案には全く興味を示さず、拒否をしたらしい。
実際、ふりふりとした可愛らしい服は今でも興味がないし、自分には到底似合わないなと感じる。
きっと、私は母のお腹の中から生まれたときに「女性らしさ」を置いてきてしまったのでは?と思うほどだ。
そんな私が大学へ入学する際、就活でも使うことを考えてリクルートスーツを購入した。
女性のスーツにはスカートとパンツタイプの2種類あるのだが、私の世代だとまだスカートタイプが主流だったように思う。
しかし、母は念のためスカートとパンツタイプの2種類を購入してくれた。
さて、私が実際の就活時にどちらのタイプを選んだのか。
きっと私のことを知らない人でも理解できるだろう。
もちろん、パンツタイプだった。
正直、スカートタイプなんて試着でしか着ていない気がする。
というか、スカートはもうどこにいったかわからない。
女性のパンツスーツは、着たことがある人ならわかると思うが、とにかく生地が薄い。
そして、女性の身体に沿うように作られているため、お尻と太ももがパンッパンになる。
下半身のシルエットも出やすいため、パンツスーツでも結局ストッキングを履かなくてはいけない。
当時から「なんでこんな不自由なものを着て、就活しなきゃいけないのだ」と違和感しかなかった。
昨今、SNSで話題になった「女性の服にポケットがない問題」。
そこから派生して、「女性のスーツには、まともに使えるポケットがない問題」も議論を巻き起こしていた。
この議論を見ていた私は、「たしかに、スーツにまともなポケットなかったな!?」と今更ながら気づいた1人だ。
議論の中でも、女性のスーツでポケットを作るのは難しいやら、男性とは異なりシルエットを出す必要があるから……など色々な話が出ていた。
そりゃ、ピッタリしたスーツを作るのなら、ポケットなんて作れないよなと思った。
もちろん、スーツの仕組みとしてシルエットは重要だろうし、女性と男性それぞれに合わせた型が必要なのだろうなという理由はわかる。
わかるのだが、それでも女性のスーツがあんなにピッタリしている必要性があるのか?と問いたい。
一応、しばらく社会人をやってきたので、念のためという名目でファストファッション店のカジュアルスーツを買ったことがある。
試着した時、ピッタリしていないのにキレイに見えるシルエットと、充分に使えるポケットがついていて「もうこれでいいじゃん」と思った自分がいた。
どうして、新卒の女性にはピッタリとしたスーツが画一的に求められるのだろう。
どうして、男性のスーツでは当たり前についているポケットが、女性のスーツではついていないのだろう。
なぜ、私はそれに対して違和感を持たず、当たり前だと感じていたのだろう。
冒頭の話の続きだが、母に対して「私は私なのに!」と言葉にしたことを覚えている。
そう思っていても、社会に出た瞬間「女性らしさ」を求められるのが世の中の現状だ。
そして、求められている「女性らしさ」の中には、女性ですらまだ違和感を持っていないことも多くある。
きっと、私がまだ気づいていない「女性らしさ」といわれる固定観念が、世の中にはたくさんあるのかもしれない。
そのように考えるだけでも、ひとつ自分の中で当たり前を変えられるのではないかと感じている。
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