「未来の女の子のために」という思いが、わたしたちを強くする

「昔は、出産で退職って割と普通だったらしいよ」「嘘だ、信じられない!」近い将来、そんな会話がなされるようになったらいいなと思う。わたしたちが「昔は、女性は家庭に入るのが当たり前だったんだもんね」「信じられないよ!」と話すように。
2024年のマイナビ転職の調査によれば、ワーキングマザーの5人に1人が“育児退職”の経験があるという。男性で育休を取る人も少しずつ増えてきたし、時短勤務やリモートワークなど、ライフスタイルに合わせた働き方の多様化が進んではきているが、それでも、だ。
先日、ある女性役員の方にお話を伺う機会があった(以下、Yさんとする)。Yさんは正社員とパート勤務を経験され、現在はベンチャー企業の役員として仕事と子育てを両立していらっしゃる方だ。
同僚が「女性はどうしても、出産やキャリアの中断に悩むじゃないですか。男性はそういうのがなくてずるいなって思っちゃうんです…Yさんもそういう気持ちはありましたか?」と質問した。Yさんは「そりゃあ悔しいよね!悔しいと思うのは、自然な感情よ」と寄り添ってくれたあとに、一言。
「バトンだと思えたら、ちょっと楽になるよ」と、教えてくれた。
「“女性は家庭を守るもの”というのが当然だった時代もあるけど、今はそうじゃないでしょう?それはわたしたちの先輩が働く権利を獲得してくれたからだよね」
「たしかに、そうですね」
「今あなたが感じている悔しさもそう。将来同じことで女の子たちが泣かないように、同じ涙を流させないようにと思うと、頑張れる気がしませんか。受け取ったバトンを思えば優しくなれるし、渡すことを考えると頑張れる。そんなふうに、わたしは考えるかなあ」
あえてわたしの感想は書かない、この話がチープになってしまうから。Yさんの人柄は、Yさん自身の言葉によって十二分に伝わっただろう。
これは性別を問わず言えることだが、本当の強さや優しさは、自分が悩んだり傷ついたりした経験を無くして身につかない。ただしその悩まされる機会は、社会の構造上、女性により多く与えられているように思う。今までは、それが不公平だと思えて仕方なかった。でも、Yさんの話を聴いて“人は戦った分だけ魅力が増していく”ということもまた事実なのだと感じたし、それは素敵なことだなと思った。
Yさんの足元にも及ばないが、自身の社会人生活を振り返ってみても、枕を濡らした夜の数だけ思いやりは深く、それでも出社した朝の数だけ自己肯定感が上がってきたような気がする。これからもそれを繰り返し、Yさんのように強く優しくなれてきた頃にはきっと、わたしはおばさんになっていて、Yさんがくださった言葉を女の子たちに伝えているのかもしれない。うん、そうなれたらいいな。
バトンを受け取っているということ、バトンを渡す立場であるということ。その両方を想うと、なんだか心が楽になる。わたし以外の女性も皆そんな歴史の中にいるのだと考えると「わたしたちは強いぞ!」と思えてくるし、声高らかに言いたくなる。
わたしたちの強いとこ。それは“今まさに戦っている”という事実、戦ってきてくれた先輩や共に戦う同世代がいること。そして、わたしたちを強くさせてくれるのは、未来にいる女の子たちだ。女性であるがゆえに悩まされながらも、同時に、同じ女性たちの存在によって「女性に生まれてよかった」と思わせてもらえること。それ自体がわたしたちの強さであり、幸せなことである。
わたしもバトンを渡す時が来るまで、受け取ったそれに感謝しながら、精一杯戦い続けたい。だいじょうぶ。過去にもとなりにも未来にも、たくさんの仲間がいるのだから。
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