追う恋から追わせる恋へ。当たって砕ける「背伸びの恋」で得た学び

化粧なんて得意じゃなかった。大人数の飲み会なんて得意じゃなかった。電話なんて得意じゃなかった。バレンタインチョコなんて渡したことなかった。
それでも背伸びしたのは、会社の先輩が好きだったからだ。
先輩は5つ歳上。高校を卒業したての小娘なんぞ、恋愛対象にはならないだろう。そう思っていながらも、必死でアプローチした。何もしないで後悔したくなかった。
毎日のようにメイク動画を見あさり、化粧品を買い、練習した。それでも当時は下手くそだっただろうなと今なら思う。
先輩がいる飲み会は積極的に参加した。もちろんいつも先輩と話せる訳ではなかった。先輩は人当たりが良く、誰とでも仲が良かったので、常に周りに人がいた。それでも少しでも話すチャンスが欲しくて、毎回参加していた。
仕事の相談を口実に、週に1回、2時間くらい電話していたこともある。いつも電話をかける前はドキドキして、何度も水を飲んで、深呼吸をしていた。
そして極めつけはバレンタイン。「いつもお世話になってるから」と、会社の昼休みに呼び出して、チョコを渡した。
そんなアプローチを続けても、手応えはなかった。恋愛対象として見られている感覚は全然なかった。でも先輩の気持ちを直接聞かないと、次の恋愛に進めないと思った。だから自分の気持ちを打ち明けることにした。
電話で思いを伝えた。付き合いたいとかは、不思議と思わなかった。ただ、「私のことどう思ってますか」と言った。
結果、やはり振られた。「後輩として大事に思ってる」と言われた。
でも私の恋愛は先輩への片思いで終わりではない。この恋愛で得たものは多かった。
それからの私は「追う恋愛」ではなく「追わせる恋愛」にシフトチェンジした。自分から告白なんてしない。告白させるのだ。
次に付き合った人には、あざとい自分を演出して、告白させた。その人は私を大事にしてくれなかったのですぐに別れたが、その次に付き合ったのが今の彼だ。今の彼とは1年半続いており、同棲している。結婚の話も出ていて、恋愛面では今幸せいっぱいだ。
そんな幸せな恋愛ができているのは、背伸びの、辛い片思いがあったおかげだと思っている。
アプローチの手応えがない、恋愛対象として見られていないという感覚があったからこそ、手応えがある感覚もわかるようになり、押しどきがわかるようになった。
必死感丸出しのアプローチで失敗したから、「積極的」ではあるが「必死」ではないアプローチができるようになった。
それらはやっぱり実体験でしか得られない学びで、言葉だけで伝えられるものではない。片思い中に散々ネットの言葉を見て、恋愛を学ぼうとしたが、本当に理解したのは振られてからだ。何より自分が当たって砕けたことで、恋愛において「追いたい」という気持ちが満足したのだと思う。
そう考えると、背伸びの恋愛も悪くなかったのかな、なんて思ったりする。
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