「今、食べている」と実感できる。辛さが苦手な私にとってのエビチリ

私は辛い物が苦手だ。
小さい頃、カレーは甘口しか食べられなかったし、辛さの代表格といえる中華なんて数えるほどしか食べてこなかった。大人になって、カレーは中辛を食べられるようになったが、たまに食べたくなるキムチは甘めのものばかり。
なんというか、舌がお子ちゃまなのだろう。
中華料理なんて、油っこくて辛いという印象なので、家族との外食でも避けてきた料理だった。たまに麻婆豆腐が食べたくなるときもあったが、甘口じゃないと食べきれないのであまり外では食べなかった。
そんな私が、ここ1年ほどハマっているのは「エビチリ」。
前職の飲み会で連れて行ってもらった中華居酒屋で出てきたエビチリが美味しくて、私の送別会の時に「独り占めさせてください!」と宣言したくらい気に入った。
その後、もしかしたらあのお店のエビチリだから好きになったのかな?と思い、色んなお店でエビチリを見かけるたびに注文するようになった。お店ごとに辛さが強かったり、甘酸っぱい味付けのところもあれば、長ネギや玉ねぎなど使う材料も異なったりする。
そんな違いを楽しんでいたある日、「これだけエビチリにハマったのだから、家でも作れるのでは……?」と思い、冷凍エビを購入して、レシピも調べて作ってみた。
これが大成功!
作りたてのエビチリと炊き立ての白米を頬張るだけで、幸福度が増していく。
エビがプリプリしていて、ソースと絡み合う長ネギもアクセントとなってたまらない。ちょっとだけ唇に残る豆板醤の辛さも、甘酸っぱさと合わさることで調和されていく。
最後に残ったソースにご飯を混ぜて食べるのも最高。
自分で作るエビチリの美味しさも知った私は、スーパーで冷凍エビが安い時に買い溜めして、料理をする体力と少しだけ辛い物が食べたい欲があるときにエビチリを作るようになった。
辛い物が苦手な私が辛い物を食べたくなるのは、少し脳みそが疲れているとき。色んなことを考えすぎて、なんだか考えることにも疲れて、何にも考えたくないときに辛さが欲しくなる。
辛いものを食べていると、ピリピリする口と火照って汗が出てくる身体の反応に「今、食べている」と感じる。
同時に、ちゃんと「自分の身体で今この瞬間を生きている」と思える。
ストレスが大きいと辛さを異常に求めるというけど、少しだけ理解できてしまう。
それに、エビチリを作っていく工程にもストレス発散の効果があるのかもしれない。
目の前の料理に集中することで、頭の中が静かになっていく気がする。
料理を作ることが基本的に苦手な私でも、エビチリを作るときだけは少しワクワクしている。
私にとっては、エビチリを作って食べることがストレス発散であり、自分を見つめ直す時間なのかもしれない。
ただ、最近はフリーランスとして生きているからか、身体がエビチリを求める回数も減ってきた。1年前の自分は、毎日がむしゃらに生きて、ストレスも抱えて、エビチリで昇華していたのだなぁと振り返って思う。
今の私は、程よくエビチリの辛さと付き合えるようになった。
いつか急にくる「エビチリ食べたい衝動」のため、これからも冷凍エビは常備しておこうと思う。
そして、私はまた辛さが欲しくなったときに、エビチリを作って食べるのだ。
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