私には小学生の頃からの幼馴染2人がいる。当時流行っていたバラエティー番組を3人とも見ていたことで意気投合して、ゆるゆると関係性が続いている。

そんな2人とは、何で関係性が続いているのか分からないくらい、好みがバラバラだ。小学生のときに、3人組の男性アイドルグループに皆でハマっていたのだが、好きなメンバーがバラバラで、お互いに「なんでこの人なの~?」と言い合っていたくらいだ。3人でお揃いコーデをしようと言っても、全員の好みが違いすぎて意見がまとまらないことばかり。

だけど、そんな好みがバラバラな3人がそれぞれ着たい服を着て、集まった最高の日があった。20歳の成人式の日だ。

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成人式の振袖は、今まで私が選んだ服の中で、恐らく一番高い買い物だと思う。レンタルだし、代金は両親が支払ったけれど、着物を選ぶのが初めてで、こんなに金額が高いのか、と驚いた記憶がある。

「たった1回の成人式だから、満足いくものを」と思って母と一緒に悩んで、王道の赤色の振袖に決めた。絞り風のデザインで、梅や桜などの花柄が可愛いく、他と被らないだろうと母と予想して選んだ1着だった。少し予算をオーバーしてしまって、父に軽くため息をつかれながらも、母と2人で「1回きりだからね!」と押し切った。

だけど、成人式当日を迎えるまで、本当は少しドキドキだった。他の子の選んだ振袖を見ると、「派手過ぎたかな」と思ってしまったし、「他の色も可愛かったかも」と決めた後で目移りもしてしまった。「たった1回だから失敗したくない」という不安がありつつ、「着たい服を選んだんだから」と言い聞かせて当日を迎えた。

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そして当日、幼馴染2人と待ちあわせた瞬間、不安な気持ちは一気に吹き飛んだ。
1人は、振袖のカタログで見て、私が憧れたモダンな振袖だった。赤一色の着物に、帯は黒、白、金の横縞と赤黒の市松模様、帯留めは金色だった。赤、白、黒、金で統一されていて、シンプルだけど流行りを抑えていた。前髪はポンパドールでふわっと上げてオデコを出している姿に彼女のセンスが詰まっていた。着物と髪型、どちらもかっこよくて、私は選ばなくてよかったと諦めがついてしまうくらい、彼女が着こなしていた。

もう1人は叔母さんから借りたという大きな赤い牡丹や市松模様などの古典的な和柄に、彼女が大好きなピンクの小花のデザインが入った着物だった。小物は金髪に合わせてベージュで揃えていて、彼女の個性を全面に出していた。金髪という華やかな髪色に大好きなピンクと振袖らしい和柄を可愛く着こなす姿に、着たいものを準備してきた様子が目に浮かんだ。

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同じ赤色の振袖を着ているのに、こんなにも好みが分かれちゃうんだね(笑)と3人で笑ったとき、心の底から、着たい振袖を着てよかったと思った。そして、妥協しなくてよかったと思った。赤に花柄の振袖は、王道すぎるかな?と悩んでいたけれど、3人で並んだバランスは最高だった。その日私たちは、スマホでも写真を撮り、私のフィルムカメラでも撮り、プリクラも撮った。動きにくいのに、せっかくの機会だからと私たちらしさを残すことは忘れなかった。

もうあれから数年経っているけれど、今でも成人式のプリクラは私の宝物だ。着たい服を着たら気分が高まるのは、どんな状況でも一緒だけど、私が一生懸命選んだ「着たい服」に全力で向かってきてくれる友達がいるから選びがいがある。

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次にみんなで着たい服を選ぶのは互いの結婚式。招待される側でも、花嫁に並ぶくらい綺麗でありたいのが私たちだ。誰も結婚する予定もないのに、今から何を着るか考えてて、私に相談してくる2人に早すぎると思いつつ、負けられないなと思う。次に着たい服を着た日はどんな思い出ができるだろうか。