小学生の頃、総合か何かの科目で「自分の将来の夢について」をポスター用紙くらいの大きな紙にまとめ、皆の前で一人ずつ発表するという授業がありました。

私はその時当時自分が何となく憧れていた「デザイナー」と書いたのですが、他のクラスメイト達は男子はサッカー選手、野球選手、運転手などが多く見受けられ、女子はパティシエ、花屋、はたまた現実的なOLなどその内容は結構バラエティに富んでいたように思われます。

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当たり前の事ではありますが、そこで書いた夢をそのまま叶えられた人ってきっとほとんどいませんよね。

私もデザイナーになりたいと思ったのはその時だけであり、学年が上がり中学、高校とどんどん現実的な進路を考えていかなければならなくなってからはほぼそういった浮ついた夢を持つ事もなくなってしまいました。

よくスポーツ選手や国家資格を必要とする職業に就いた人へのインタビューでなった理由を問われた際、

「自分の小さい頃からの夢であったから」

と答えている人を見た事がありますが、自分の幼少期に憧れた心をそのまま貫き、大人になってそれを実現させる事ができる人というのは本当に尊敬に値するな、と感じます。

デザイナーという夢がほぼ消滅した後も、影響されやすい性格の私は進路を選ぶ際、ピアノをやっているからこれを極めて音大に進学するのはどうだろう、とか文系より理系の方が手に職がつきやすそうだから専攻を変えるのはどうだろう、と出来もしない癖に色々とどっちつかずの迷いをした事もありました。

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しかし、結果的にそのまま文系の道に進み、大学は中高からのエスカレーター式、その後の就職先もこれまた何の変哲もない田舎の会社の事務。

就職に失敗し親のスネを齧る寄生虫みたいになった訳ではないため、それもそれで恥じる事ではないのかもしれませんが、それでもたまにふと私の人生ってもっと他にも選択肢があったのかなぁと心にモヤがかかる事もありました。

趣味もそこそこあったけれど日々の仕事に追われてそれらを楽しむ余暇もなくなってしまったなぁ......。

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しかし、そんな風に考えていた時、ちょうど近々友人の誕生日があり、その子とは中学からの付き合いであったため、せっかくならとプレゼントと一緒にちょっとした手紙を書く事にしたのです。

初めはほんの一、二枚の予定であったのですが、思いのほか筆が乗り、気が付くと便箋の枚数は八枚程度にまで膨れ上がっていました。

書き終えた時に、ああ、そういえば私は昔から書く事が好きだったなという事を思い出したのです。

昔から学校の課題の中で何かの感想を書く時、両親や友人に手紙を宛てた際には文章力があるね、と言ってもらえる事が多かったし、自分を表現する事が苦手だった私はその分文章に書き起す事を得意としていたのかもしれません。

学生でなくなり社会人になった後はただPCを操作し事務的な資料や表を作るのみ、日々の忙しさに追われ人に手紙を書いたりといった文章を構築する作業をほとんどしなくなっていました。

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しかし、これを機に私は人に対する手紙を書く事を再開し、体験した出来事をエッセイに綴る作業を通して自分の感じた事を文章で表現する喜びを改めて感じるようになりました。

手紙に関しては自分が貰っても嬉しいし、このデジタルの時代だからこそ一つ一つ思いを込めて文字を綴る贈り物は電子よりも確実に相手の心へ響くのだろうなぁと感じます。

一時期、ライター等の何か文章に携わる仕事をしたいなぁと思っていた事もありました。しかし、趣味程度ならまだしも本職にするには厳しい世界であるし、きっとそこまでの実力が自分には無いのだろうと早々に諦めてしまったのです。

書く事を再開した今も文筆業を専業でしたい!なんて高望みはませんが、他の仕事をしつつもその中に自分の好きな要素を少し取り入れる事によって日々の生活を華やかな物にできるのだという事に私は改めて気付かされました。

夢がある人、ない人、それを叶えた人、叶えられなかった人......と実に様々ですが、私は夢の延長として自分が好きで得意とする「書く」という行為を今後も続けていきたいと思います。