義務感から解放される喜び。ご機嫌でいられる服を選ぶということ

Tシャツにジーパン、Tシャツにジャージパンツ。イケてないと思われるかもしれないが、私の普段のファッションは「居心地の良い服」に落ち着いている。
女の子らしさからかけ離れていると思っていた私は、可愛い服を着るのが苦手だった。可愛い女の子たちと同じ格好をするのが恥ずかしかった。そして、他者から、特に異性から、女の子として見られるのが嫌だった。だから、私服はいつもパンツスタイル。高校時代の制服は全国一可愛いと自負しているセーラー服だったが、私がそのまま着るにはあまりにも素敵すぎて、セーラー服が見えないようにいつもスウェットを上に羽織っていた。
そんな高校時代の忘れられない出来事がある。観光地にレトロ衣装を着て散策できるスポットがあり、友人と入ることにした。入口に展示されていた男性の宮廷服に一目ぼれし、「これ着たい!」と思わず口にしていた。
しかし、お店の方に「だめよ、女の子はこっちを着なきゃ」と一蹴され、着ることになったのが、恥ずかしいから着たくなかったバッスル・スタイルのドレス。ドレス自体の構造が興味深くてすぐに気持ちが感動へと切り替わったし、友人と楽しく貴婦人ごっこをしている写真は今見返しても笑みがこぼれるような思い出深い経験となったが、あの時見た宮廷服への憧れも残る。
大学生になり、私服で出かける機会が増えると、母は女性らしい洗練された服を着てもらいたがった。「スカート選ぼうよ」「絶対に嫌だ」の攻防を何度繰り返したことか。その頃の流行色が私には壊滅的に合わないベージュ色で、レディース服売り場がどの店もベージュだらけ、自分に合う服が極端に少なかったことが相まって、「おしゃれをすること」への忌避感が強まった。
転機となったのは応援しているアイドルのYouTubeを観たこと。可愛いものが大好きな彼女が「かわいいものぜんぶ、私のもの」とワクワクしながらメイクをしているのを見て、おしゃれは義務感によってするものなのではなくて、自分が楽しむため、元気になるためにするものだという気づきを得た。
その後は、自分に合って、気分も高まるようなファッションを探し、楽しむようになった。その過程で、自分の顔の造形がフェミニン寄りだと気づきメンズライクな服があまり似合わないことが判明したり、肩幅が広いためにパンツスタイルのセットアップが合わないことがわかったりと、着たかった服を断念することもあったが、ここ最近になって自分らしいスタイルが確立できてきたように思う。
そして、女の子らしさの有無にこだわらず、自分が着ていて肯定的な感情になれれば良いと気づけたから、スカートやワンピースにも挑戦できるようになった。
社会人になってオフィスカジュアルな装いをするようになって気がついたのが、自分はカッチリとした服、フル装備のメイクをすると緊張して落ち着かないということだ。働き始めて数ヶ月はジャケットを着用していたが、生地が厚く伸縮性が少ない服は肩の重みと身体のこわばりでどっと疲れが出る。今ではTPO上許される範囲でゆるっとした服で出勤している。
普段はゆるっとしたパンツスタイル。休みの日は極限までラフな格好で。メイクは最低限のパーツしかしていないしスカートもソワソワしてしまうので普段は着ていない。でも、大好きな人に会う日や気分を上げたい日はいつもよりもおしゃれをして、なりたい自分になる。そんなスタイルが今の私には合っているし、これからもその日自分が一番上機嫌でいられる服を着ていたい。
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