「言葉」でつながった友。彼らはまるで人生にふいに差し込む光のようで

東京に来て数年、私のスマホは静かすぎるほど静かだった。
昔から人付き合いが苦手だった。……いや、正確に言えば「話すこと」が苦手だったのだと思う。どれだけ仲の良い友人でも、LINEの方が気楽に会話できた。直接会うよりも、一人で過ごす方がずっと楽だった。
それでも時々、落ち込むことがある。スケジュール帳の空白を見つめたとき。SNSで誰かの楽しそうな投稿を眺めたとき。心の奥にぽつりと浮かぶ──わたしの周りには、誰もいない。
二十代後半になった。新潟から東京に出てきて、学生時代の友人とはほとんど会わなくなった。唯一ずーっと連絡を取っている人はいるけれど、それもたったの一人だけだ。大人になると、ライフステージの違いがどうしても広がっていく。家庭を持つ人、子どもを育てる人、仕事に打ち込む人。話がかみ合わなくなっていって、LINEの返信すら遅くなってしまう。そうしてまたぽつりぽつりと繋がりが消えていく。誰かと話したい。誰かに聞いて貰いたい。そんな時に話せる友人がいない。心の奥に、ぽっかりと穴が開いたように思えた。
だからこそ、大人になってからできた友人に救われた。本を読むことが好きだった。最初は、感想を残しておくために始めたInstagram。そこで出会った人たち。年齢だって全然違う。ただ本が好きという共通点だけで繋がったのに……たったそれだけなのに、Instagramを辞めてしまった今でも連絡を取れる方がいる。心配してLINEを送ってくれる方がいる。時々、一緒に飲みに行って近況を話す。私にとって、この距離感が心地良かった。
そして、今年に入ってから始めたnote。そこで出会った人たちもいる。文章を書くという行為を通して知り合った人たちは、言葉の奥にある想いを共有できるような気がして、何となく、何となくだけれども、ふとした瞬間に心が繋がっているような気がする。オンラインという距離のある世界で出会ったはずなのに、気づけばすぐそばにいる存在になっていた。
大人になってからの友人は、全然多くない。今でも、学生時代からずーっと仲の良い友人がいる人に憧れることもある。けれど、数の多さではなく、関係の深さが私を支えてくれているのだと思う。「強くなったね」と言われることがある。それはきっと、見守ってくれている人たちがいることを知れたから。人の優しさに素直に気づけるようになったから。そして、それを受け取れるようになったから。偶然のように出会った人たちのおかげで、今の私がいる。そのことを忘れないようにしたい。大人になってからできた友人は、人生にふいに差し込む光みたいな存在だと思う。その存在を大切にしたい。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。