私は可愛い服が好きだ。
ここでいう可愛い服、というのは、女の子を素敵に見せることが出来る服、という意味ではない。どちらかというと、単体で見たときに可愛い服、と言ったほうが近い。着てみたところで、一般的な素敵な女性になることは出来ない感じの服。
ここからは、私がこれまでに購入したそのような服たちを紹介していきたいと思う。
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まず覚えているのは、蛇口から金魚が出てきているデザインのグラフィックTシャツ。
いまいち意味が分からないだろうが、そう表現するしかないのだ。白地のTシャツで、黒の線のみで描かれた蛇口がプリントされている。そしてその蛇口のところから、金魚が出てきているデザインだ。金魚のほうは結構リアルに描かれている。写真一歩手前くらいの描き方だった。
このTシャツは、高校生のときにしまむらで買った。定価1200円くらいの商品だったが、少し割引になっていて980円になっていた。あまりの可愛さに感動したことを覚えている。ちなみに、他の服には合わせづらかった。当たり前である。
あとは、ドラえもんのしずかちゃんがプリントされた赤いTシャツ。
これはかなり印象的だった。大学在学中にオフハウスで購入した。元々500円だったのが、半額になって250円だった。買ったときにはそこまで思い至らなかったが、今考えると、あれは非公式の商品だったのではないかと思う。何故そう思ったかというと、しずかちゃんの白目の部分に生地の赤色が透けていたからだ。その結果、目が充血しているしずかちゃん、という感じになっていた。公式の商品であれば、例え赤い生地だったとしても、そのような仕上がりにはならないように手を尽くして作られることだろう。今だったらこのような服は外では着ないが、このTシャツを買った頃は気が狂っていたため、2回ほど大学に着ていった。
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あと気に入っていたのは、リアルな猫ちゃんのカバン。これは服ではないけれど、服飾品ということで紹介させてほしい。カバンの面積いっぱいにリアルテイストの猫ちゃんが印刷されているデザインだった。ちなみにこのカバンの持ち手は猫ちゃんの耳の方ではなく顎の方に付いているため、持った状態だと猫ちゃんの頭は逆さになってしまう。友達からは「猫の生首逆さ吊りバッグ」と呼ばれていた。
私とこのカバンとの出合いは、見知らぬお姉さんが持っていたのを見たところから始まる。普通に綺麗な感じのお姉さんが、この個性的なカバンを持っていたのが印象的だった。その数ヶ月後、セカンドストリートで同じカバンを発見した。値段は330円。即決で購入した。が、私は普通に綺麗な感じのお姉さんではなかったため、「個性派(笑)」感に拍車がかかっただけだった。
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以上が、特に記憶に刻まれている私の「可愛い服」たちだ。
ここまで読むと、変な服を平気で着る気が狂った筆者だと思われたかもしれない。実際、そういうタイプではあるのだけれど、今現在は普通に会社勤めしていることもありだいぶ落ち着いてきた。よく服を買うのは、ロペピクニック、ナチュラルクチュールなど。少なくとも、キャラクターものはほとんど着なくなった。
しかし、私の根底は変わっていない。結局、ちょっと変なデザインに惹かれてしまう。大人として、社会人として、グッと堪えて我慢するけれど。最近気になっているのは、ナチュラルクチュールが販売しているラフランス柄のスカートだ。割り引かれて2000円台前半になっていた。白地に淡い色でラフランスが描かれているから、しっかり見ないとラフランスだとは分からない。これなら会社に着て行っても許される気がしている。
咎められない範囲で、どこまで「可愛い服」を着られるか。それが今の私のファッションの楽しみ方だ。