運動や食事制限をしたら、体は引き締まってほしいし、体重も減ってほしい。
恋人はとても大切だから大切にしたいし、私のことも大切にしてほしい。
聖人君子でない限り、人は何かを与えた時、必ず見返りを求めるものではないだろうか。
独善的な気質がある私も例外なく与えた分の見返りを求めてしまう。

ただ、いくら親しい人、ましてや恋人でさえも所詮は他人。
同程度と自分が感じるほどの見返りが返ってくることはそう多くはない。
私はかつてそれを痛いほど味わったことがある。
だから人に求め始めると苦しくなることを分かっているから私は射程をずらした。
私の仕事はやればやるほど結果が返ってくる。
そんな見返り100%の部分が、私の仕事の好きなところだ。

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何千ページもある規定が何十冊分も詰まったipadを常に携帯し、人命にも直結する事象の場合は瞬発力が求められ、決して人前には出ないけれど、普段生きる多くの人々を陰で支える、そんな仕事だ。
具体的な内容は避けるが、私はひょんなことからこの仕事を知り、必死の就職活動を経て今の仕事に就くことができた。
対人ではあるものの、大部分が規定にて事が進むこの世界は、論理的思考で生きてきた私にとっては大変都合の良い仕事だ。
いくら意見を通そうとしても裏付けがないと人は動かない。
だから私は根拠となる規定を必死に勉強し、それを武器に人を説得する。
盾であり、相手を説得するための剣でもある規定を元に行う仕事では、ほとんど100%の結果が返ってくる。

しかしそんな規定にも面白い文言がある。
「状況に応じて柔軟に対応すべき」
この世で1番悩ませる言葉であり、この世で1番ワクワクするこの言葉。
自分の判断で物事の局面を乗り越えねばならないという瞬間が存在する私の仕事において
その瞬間が1番嫌いで、1番興奮するのだ。
規定に沿って、規定通りに物事を推し進めることはもちろん好きだ。
100%の結果が返ってくるから不服はない。

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しかし、私は非常に貪欲な人間でもある。100%じゃ満足できないこともある。
この「柔軟に対応すべき」という言葉はいわゆる賭けと同じだ。
自分の知識をフル回転させてその瞬間瞬間を、自分の力で解決する。
結果が10%しか返ってこないこともあれば120%返ってくることもある。
10%の場合は自分の知識のなさを悔やむこともあるし、対人ということもあるので時には相手を恨むこともある。
簡単に言えば、私のいうとおりにすればことは上手くいったのにと、そんな子供じみたことを考えてしまうこともある。
もちろん自分の判断ではなく、相手の判断がより最良の場合だってあるだろう。
私の相手にしている人もプロだ。
彼ら彼女らの判断が私の知見になることもしばしばある。

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それらをひっさげて、より最良な対応を目指すのが私の使命でもあるのだ。
「アドバイスありがとうございました」
「うまく局面を乗り越える事ができました」
割とイレギュラーな事へのフィードバックが早い私の仕事では、直に人から感謝されることも少なくはない。
そんな言葉がなくても、私の助言通りに事がうまくいったかを確認する術はあるため、机の下でガッツポーズすることもある。
かつては怒られることも多々あったが、それらを糧に知見を深め、結果として私の判断で物事を乗り切った時は、規定通りに事を進めた時よりも何倍も達成感を味わう事ができる。

通常時は人の作ったものに沿って滞りなく物事を進め、イレギュラー時は局面を読みながら被害を出すことなく立ち回る。
うまいことバランスをとりながら私は私の行動に見合った見返りを得る事ができている。
非常に居心地が良いことを否定しないが状況に甘んじてはいけない。
私はまだまだ最良を見つけている途中なのだ。
もっと、もっと深くまで勉強し、その瞬間の最良の判断を探し続けることが、私の人生の一生の課題であり、この仕事における最大の楽しみである。