私には家族がいる。家族構成を説明すると、お涙頂戴に聞こえてしまうと嫌だなと思いはするものの、優しいお言葉をかけて下さる方が多く、ありがたいと思う。
決して不幸を感じているわけでもないし、楽しく毎日を過ごしているので、私はかなり幸せ者だと思う。

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家族構成は、主人と私、息子と娘の4人家族。息子は難病で、小学2年生から車椅子生活で、高校生になった今では、日常生活の全てにおいて介助が必要な状況だ。娘も難病で知的障害もあるけれど、自分の生きづらさと戦いながら楽しく生活している。息子も娘も、明るく、優しくて、自慢の子供達だ。主人も、仕事をして、休みの日には息子の介助にと頑張ってくれている。
障害の子供がいます、と言うと、ご苦労されているのね」「お母さん頑張っておられるのねなどのお言葉を頂く。が私自身、人として、母として、まだまだ未熟なので、勿体無いお言葉だと思う。

そんな毎日に、強烈な奇襲を仕掛けてくる人物がいる。顔を見るだけで様々な思いがフラッシュバックするし、とにかく恐ろしい。幼い頃から変な人だなと思っていたけれど、幼い自分では理解しきれなかった。20年前に父が亡くなり防御壁がなくなったからか、以来さらに恐ろしさをレベルアップさせた。あの恐ろしさは、レベチだと思う。その人物は、私の母だ。

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(以下は、私の母のことを、ハハと表記する)

ハハがどれだけ強烈なのか、実際にあったエピソードを2つあげたいと思う。

1つ目私が幼い頃からすぐキレる人で、他人に対しても、とにかく自分の気に入らない態度や言動があれば、怒鳴りまくる。近所づきあいも上手くいくはずなく、当時2階建てのコーポの1階に住んでいたのだが、2階の人がうるさいと言って、木刀で天井を突き、天井が穴だらけになっていた。恐ろしいことこの上ない。

2つ目私が娘を出産し間もない頃、ハハが私の家に手伝いに来てくれたのだが、娘の授乳中にキレて、私の頭を叩き始めた。授乳中だったので、娘を守ることで精一杯になり、抵抗もできずにいたところ、幼い息子が、「やめろー!!!!」と叫んで止めてくれたのだ。私はその時、息子がロトの剣を持ち、魔王と戦う勇者に見えた。その横には、かの有名なスラ○ムもいた!(それは、溜まりに溜まった洗濯物の山だ!)

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ハハがキレたり、機嫌が悪くなったりする原因はいつもわからなかった。私が至らない人間だから、あるいは私も母になり母親の大変さを実感した上で子育ては大変だからキレても仕方がないのだと、ハハとの距離感をバグらせていた。

今年の初め、息子が体調を崩し、命の危機に瀕する状況になった。1ヶ月の入院を経て、見事復活し、リスクがあるものの胃瘻のオペも乗り越え、自宅へ帰ることもできた。その経験は、私の中で小さな火種が灯るような、変化を起こし始めた。

息子が退院後は、娘と家族との時間を一緒に過ごしたり、息子の医療ケアなどで、あっという間に時間が過ぎ去る。ハハの機嫌伺いができず、話(近所の愚痴)を真剣に聞かなかったため、「あなたは信頼できない!」とハハに言われた時、火種が大きく燃え上がり、燃え切ったのだ。

私が自分の命にえてでも守りたいのは子供達であって、ハハではない。ハハとのいざこざに、子育ても仕事も頑張ってくれている主人を巻き込んではいけない。私が心の底から愛しいと思えるものだけを大切にすればいいのだと強く思った。

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しかし、悲しいことに、その決意がフラッシュバックと共に、いや、やっぱり私が悪いのだと、揺らいでしまうことがある。けれど、私自身が幸せになるためには、ハハと距離をおき、すぐに変わることは難しいけれど、少しずつ、焦らず、新しい私になりたい。そして、いつか、何事にも動じない強い私になりたい。