クリスマスと言えばケーキ、ケーキと言えばいちご。クリスマスケーキの定番であるショートケーキには、となりに砂糖で作られたサンタクロースが添えられている。そんな定番のクリスマスをいつかは過ごしてみたいと思うが、今はまだ連想ゲームの域を出ない。
今回思い返すクリスマスは、そんな連想ゲームにちなんだ話をしよう。
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私の母は料理が上手な人だ。毎日のご飯だけでなく、たまに作るケーキやクッキーなどのお菓子も美味しい。当たり前に美味しいものを作るので、美味しいことになんの疑いもなく食べていた。そんな母はユーモアもある人だ。面白いと思ったこと、可愛いと思ったことを取り入れて、私たちの生活に反映させてくれた。
そのひとつが、いちごで作るサンタクロースだ。毎年冬になるといちごが売り出される。旬とは言えないので値段は高いが、食べる季節としては持ってこいなので、安く売られているときを見つけて買ってきてくれた。いつもはそのまま軽くゆすいで食べるのが定番なのだが、この年は一味違った。
学校から帰ると、お決まりのように冷蔵庫を開ける。お菓子やジュースを探しては、夕方のドラマの再放送のお供にしていたからだ。クリスマスも近くなってきており、この日も毎年と同じく、パックのいちごがあった。今夜のデザートとして食べるために買ってきてくれたのだろうと思い、いいものをみた、という気分で冷蔵庫の扉を閉じた。
夕食が済み、お風呂から上がったとき、このときもまた、冷蔵庫の扉を開ける。入浴後のジュースやスイーツを探すためだ。毎日掘り出し物が入っているわけではない。しかし、冷蔵庫の扉を開けるのはいつもの習慣だった。また、夕飯の残りが入っているいつもの光景だろうと思い、流れるように冷蔵庫の扉を開けた。すると、サンタクロースの見た目をしたいちごが、冷蔵庫の中段を占拠しているではないか。ちゃんと顔も書かれていたので、少し怖さもあり、ハッとしたが声を出す前に扉を閉めた。
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いちごのサンタクロースというのは、いちごの先端を上にして1/3ほどを切り、間にホイップクリームとチョコチップで顔を描いたものだ。粉砂糖をかけると、雪の見た目も再現できるので、季節感をさらに感じられる。簡単に作れて可愛らしいので、小さな子どもとでも作業ができるクリスマスのデコレーションである。1体であれば可愛さがあるものの、そのときは1パック分のいちごサンタがお皿に並べられていた。
顔はすべてこちらを向いていたので、扉を開ければ自然と目が合うようになっていたのだ。母に聞くと、試しに作ってみた、と軽い返事が返ってきた。
家族揃って食べようとなり、冷蔵庫の中段から彼らを出す。ちんまりとしたサイズのいちごサンタが間隔を開けてまばらに置かれていた。いちごそのものの形や、切り落とした部分の大きさによって個体差があるので、すべてが違って可愛らしかった。7人のこびとのような少しだけ違うオリジナリティを持ったいちごサンタ。味はもちろん美味しい。
作り方がかんたんなので、2回目からは母と一緒に作るようになった。クリームの種類を増やしたり、サンタの目となるチョコチップも違うものを使ってみたりと、アレンジを加えながら楽しんだ。次の年も同じように、クリスマスが近づくといちごサンタが顔を出して、私を待ち構えていた。ちょっとした遊び心から作られたクリスマスのいちごサンタは、今も私のカメラロールに収められている。一時期は待ち受けにしていたくらいなんとも絶妙な面白さを突きつけてくる存在だった。
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いつか自分が子どもや家族に作る機会ができたらやってみたい。我が家の定番として定着させてもおもしろそうだと思う。ショートケーキの上に乗せても季節感がさらに出てかわいいだろう。クリスマスを簡単かつおもしろく彩ってくれる出来事だった。このときに戻って、もう一度母と一緒にクリスマスを遊びながら楽しんでみたい。