選挙で候補者を選ぶのは、約十年間選挙に行き続けてきた私でも、難しい。選挙公報を見ても、皆ほぼ同じことを言っているし、経歴や人柄まで詳細に調べる暇はない。

そんな私だが、約十年間選び続けて、それなりの基準ができてきた。それを今から書こうと思う。「候補者の選び方、全然わからない」「選挙だるいので行きたくない」と考えたことがあるなら、ぜひ読んでほしい。あと、参考になったら嬉しい。

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私が候補者を選ぶ時重視しているのは、「自分がしんどくなった時でも、暮らしやすい社会にしてくれそうな政党の候補者か」ということだ。無所属の候補者の場合は、背後についている政党を見ることにしている。

なぜ自分がしんどくなった時が基準かというと、人間は結構簡単にしんどい立場……弱者になりやすいからだ。

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過労でうつ病になったり、子どもができた時、ワンオペで家事や育児をしなくてはならなくなったり、高齢の親が突然病気になって、介護しなくてはいけなくなったりする。

それに人間は生きていれば必ず老いる。健康でも、腰が曲がって歩くのに時間がかかり、力が弱くなる。今までできていたことができなくなり、仕事にありつくのが難しくなる。

福祉的な観点だけでなく、人権の観点も。住む場所や、権力への批判の自由を保証しているか、もし、拘束されたとしても危害を加えない保証をしているかという観点もある。

「この発言をしたら、捕まるんじゃないか」「勝手に住んでいる場所や財産を奪われないか」という恐れは、思考の容量を食うので、日常生活がおぼつかなくなる。国単位でなく、会社単位でなら思い当たるのではないだろうか。

「この上司を批判したらパワハラされるんじゃないだろうか」と考えて仕事をすると、効率は落ちるはずだ。それと同じだ。思考の容量はなるべく自分の好きなことに使えたほうがいい。

だから、そうなったとき、「暮らしやすい街や国にしてくれそうなのはどの政党か」と考えて投票している。自由にものを言って、住み心地のいい場所で、たとえ心身がしんどくなってしまった後でも、楽しく生きたいからだ。

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ところで、最初の選ぶ基準を読んだ人は、「どうして候補者自身じゃないの?」と思ったのではないだろうか。

それは、基本的に、政党に属する議員は、政党の意見に従わざるを得ないからだ。例えば、政党が経済重視の方針を取っていた場合、候補者がどんなに福祉寄りの公約を出していても、政党の方針に従って経済重視の政策に票を入れることが多くなってしまう。ということだ。

政党の特色を知るには、自分の関心のある政策をいくつか選んで、それぞれの党が、どんな意見や法案を出しているかを見るのが簡単だと思う。関心のある政策であれば、追うのも多少は楽しくなるし、複数の政策を選ぶことによって、党のいろんな側面を知ることができるようになる。

個人的に一番政党の特色が出るのは、現行の憲法に対するスタンスだと思っている。憲法をそのまま運用するのか、変えるのか。変えるならどの部分をどう変えるのか……様々な政党が様々なスタンスをとっている。

憲法は国家権力への縛りだ。憲法がどんなもので、それをどう変えようとするのか、そのまま守ろうとするのか、憲法に対する政党の動きは、政党の政治への向き合い方が一番強く出るのではないだろうか。

憲法を学ぶには、法律の独特な言い回しに慣れるまで大変かもしれないが、今は解説本が出ているし、政党の改憲案の解説をしているサイトなどもあるので、見てみると面白いと思う。

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最後に、少しでも選挙や政治に興味を持った人へ。情報を集めるのは、裏取りをしっかりしているメディアで行ったほうがいい。SNSなどは、信ぴょう性ももちろんだが、攻撃的だったり、差別的な発言を比較的多く見かけるので消耗する。楽しくストレスなくやっていこう。